1. プロジェクトの概要
ビジネスの現場では、「何が売れているか」だけでなく「どこで売れているか(地域戦略)」が重要です。しかし、表形式のデータだけでは地理的な偏りや隣接地域との関係は見えてきません。
本プロジェクトでは、アイオワ州の酒類販売データから「地域ごとの収益性」を抽出し、地図(マップ)を用いた可視化を行いました。さらに、地図をクリックすると詳細データが表示されるインタラクティブなダッシュボードを構築し、意思決定者が直感的に地域戦略を立案できるツールを作成しました。
2. 使用ツールと技術スタック
- データセット:
bigquery-public-data.iowa_liquor_sales.sales- 店舗の住所情報(City, Zip Code)を含む大規模トランザクションデータ
- SQL (Google BigQuery):
- 地理情報(City)に基づいた集計
- 地域ごとのKPI(総売上、利益率、店舗数)の算出
- BI (Tableau Public):
- ジオコーディング(地名からの緯度経度自動生成)
- シンボルマップの作成(サイズ=売上、色=利益率)
- ダッシュボードアクション(フィルター連動)の実装
3. SQLによる地理データの抽出
Tableauで地図を描画するために必要な「地名(City)」を軸に、売上と利益を集計しました。
/* 地域別収益性分析クエリ */
SELECT
city,
zip_code,
COUNT(DISTINCT store_number) AS store_count,
SUM(sale_dollars) AS total_sales,
-- 利益率の算出(ゼロ除算回避)
SAFE_DIVIDE(
SUM(sale_dollars - (state_bottle_cost * bottles_sold)),
SUM(sale_dollars)
) AS profit_margin
FROM
`bigquery-public-data.iowa_liquor_sales.sales`
WHERE
date >= '2022-01-01'
AND city IS NOT NULL
GROUP BY
city,
zip_code
HAVING
total_sales >= 10000 -- ノイズ除去
ORDER BY
total_sales DESC;
4. Tableauによるダッシュボード構築
① シンボルマップによる概況把握
地図上にプロットした円の「大きさ」で売上高を、「色の濃さ」で利益率を表現しました。 これにより、「デモイン(Des Moines)のような大都市は売上が大きいが、利益率は標準的である」一方、「郊外に利益率が高い隠れた優良地域が存在する」といった傾向が一目で把握できます。
② ダッシュボードアクションの実装(技術的ハイライト)
単なる静的なレポートではなく、「探索的な分析」を可能にする機能を実装しました。
- 機能: ダッシュボード上の「地図」をクリックすると、右側の「詳細リスト」がその地域(都市)の情報だけに自動で絞り込まれます。
- メリット: 全体像から気になった箇所をドリルダウンする思考プロセスを、ツール上でシームレスに実現しました。
▼ 完成したインタラクティブ・ダッシュボード

5. 結論と地域戦略への提言
- 都市部の戦略: 売上規模(円のサイズ)が大きい都市部は競争が激しいものの、安定した収益基盤です。ここではシェア維持が最優先です。
- 高収益エリアの開拓: 地図上で「色が濃い(利益率が高い)」地域は、高価格帯の商品が売れている、あるいは原価率の良い商品構成になっている可能性があります。これら「隠れた高収益エリア」の成功モデルを他地域へ横展開することが、全体の利益率向上への鍵となります。
