Python一強時代にRを学ぶ意味とは。データサイエンティストとしての「自信」を取り戻したある対話

私のスキル

Python一強時代にRを学ぶ意味とは。データサイエンティストとしての「自信」を取り戻したある対話

半年間にわたる学習の末、ようやく「Googleデータアナリティクスプロフェッショナル認定コース」を修了しました。

SQLでデータを引き出し、Tableauで可視化し、そしてR言語で統計分析を行う。カリキュラムを終えたとき、私の中には確かな達成感がありました。しかし、その高揚感は、皮肉にも自分自身の手で行った「ある分析」によって、冷ややかな不安へと変わってしまったのです。

今日は、私が直面したキャリアへの不安と、それを解消するためにAI(Gemini)と行った対話の記録を共有します。もしあなたが、学習中の技術選択に迷いを感じているなら、この記録が少しの助けになるかもしれません。

飽和する市場、取り残された(ように見える)R言語

認定コース修了後、私はふと気になり、Tableauを使って「プログラミング言語に関する質問数とシェア率のトレンド(2014-2022)」を可視化してみました。

そこで突きつけられた現実は、あまりに残酷なものでした。

  • Pythonの圧倒的支配: 2014年から急拡大し、シェアは83%に達している。
  • R言語の停滞: ニッチな領域で横ばいを続けているものの、Pythonの勢いには遠く及ばない。

「私は、学ぶ言語を間違えたのではないか?」

そんな疑念が頭をよぎりました。求人情報を見ても「Python必須」の文字ばかり。Googleのコースに従ってRを懸命に学びましたが、それは市場のニーズと逆行する「時間の無駄」だったのではないか。そんな焦りが、胸の奥で重くのしかかりました。

AIコーチへの問いかけ:「私は時間を無駄にしましたか?」

一人で悩んでいても解決しないため、私はこの不安をそのままAIにぶつけてみることにしました。相手は、私が信頼する壁打ち相手であるGeminiです。彼に「シニアデータサイエンティスト」というロールを与え、私のTableauのグラフを見せた上で、率直にこう尋ねました。

「Pythonが飽和し覇権を握る中、Rを学んだ私は時間を無駄にしたのでしょうか?」

返ってきた答えは、私の予想を良い意味で裏切る、非常に力強いものでした。

Geminiからの回答: 「結論から申し上げます。『時間を無駄にした』というあなたの認識は間違いです。あなたは、データサイエンスの『統計的本質』を理解するための最良の入り口を通ってきました。」

彼は、私の分析結果(Python 83%)を否定しませんでした。しかし、その**「解釈」**を劇的に変えてくれたのです。

1. 「飽和」ではなく「インフラ化」

私が「成長が止まった(飽和)」と捉えたPythonの数字を、彼は「デファクトスタンダードとしてインフラ化した」と再定義しました。そしてR言語については、「衰退」ではなく「特化型領域(統計・研究)での地位を固めた」と評価しました。私は「消えゆく言語」を学んだのではなく、「専門性の高い武器」を手に入れていたのです。

2. 構文ではなく「思考」を手に入れた

個人的に最も救われたのは、次の言葉でした。

「Googleは『プログラマー』ではなく『データアナリスト』を育成しようとしています。(中略)Rを学ぶことで、あなたは無意識のうちに**『データフレーム思考』と『ベクトル演算』**という、データサイエンスの基礎体力を身につけました。」

Pythonから入った初学者は、データを処理する際にfor文などの「ループ処理」で考えがちだそうです。しかし、Rで育った私には、データセット全体を一度に扱う「統計的な直感(Tidy Dataの概念)」がすでに備わっている。 これは、言語が変わっても失われない**「資産」**なのだと気づかされました。

R to Python:知識の「翻訳」という戦略

精神的なフォローだけでなく、Geminiは具体的な技術戦略も提示してくれました。それが**「R to Python ブリッジ・ロードマップ」**です。

彼のアドバイスによれば、私はPythonを「ゼロから」学ぶ必要はないとのこと。「Rのこの機能は、Pythonではこれ」という**「翻訳」**を行うだけで、学習時間を通常の3分の1に短縮できるというのです。

例えば、データの加工において:

  • Rの %>%(パイプ演算子)は、Pythonの .(メソッドチェーン)と同じ。
  • Rの filter() は、Pythonの .query() と同じ。
  • Rの mutate() は、Pythonの .assign() と同じ。

コードの書き方(方言)が違うだけで、裏側にある「データをどう料理するか」という思考プロセスは完全に一致しています。 「新しい言語を覚える」と思うと億劫ですが、「すでに知っている概念に新しいラベルを貼る」と考えれば、急にハードルが下がった気がしました。

気づきとアクション:バイリンガル・アナリストを目指して

今回の対話を経て、私のマインドセットは大きく変わりました。

私は「Pythonを使えないRユーザー」ではありません。**「データ分析の作法を熟知しており、これから第二言語としてPythonを習得するアナリスト」**です。

これからのアクションとして、まずはGeminiの提案通り、以下のステップを実践します。

  1. 環境の移行: RStudioから、Google Colab(Jupyter Notebook環境)へ。
  2. コードの翻訳: 過去にRで行った分析課題を、Pandasを使って「書き直す」練習をする。
  3. 使い分けの意識: EDA(探索的データ分析)は手になじんだRで素早く行い、実装フェーズではPythonを使う「バイリンガル」を目指す。

おわりに

技術の世界は移ろいやすく、学ぶべきツールも日々変化します。その中で「自分の選択は正しかったのか」と不安になることは、誰にでもあるでしょう。

しかし、特定のツールを通じて学んだ「本質的な思考法」や「データへの向き合い方」は、決して無駄にはなりません。むしろ、遠回りに見えたその道が、深い洞察力を養うための近道だったと気づく日が来るはずです。

もし今、学習に行き詰まっている方がいたら、一度視点を変えてみてください。あなたが積み上げたその時間は、必ず次のステップへの強固な土台になっています。

さあ、今日はGoogle Colabを開いて、新しい「翻訳」の旅に出かけようと思います。