はじめに:Excelとの格闘から「直感的な把握」へ
皆さんの現場では、在庫管理をどのように行っていますか。 もし、何万行もあるExcelのデータをただ眺めているのだとしたら、それは人間の脳にとって「苦行」でしかありません。単調な確認作業は、働く人の「内発的動機づけ」を削ぐ最大の要因です。
「どこの倉庫で」「何が」欠品しそうなのか。 今回は、GoogleのBIツール「Looker Studio」を活用し、全国16拠点の物流在庫リスクをひと目でモニタリングできるダッシュボードを構築しました。 数字を「地図上のビジュアル」に変換し、意思決定のスピードを劇的に上げる方法論を解説します。
複雑な変数を「単純化」する設計思想
今回のプロジェクトにおける課題は、以下の複雑な要素をいかにシンプルに可視化し、次のアクションへ繋げるかという点にありました。
- 対象:北は北海道から南は鹿児島まで、全国16箇所の物流拠点
- 商品:3温度帯(常温・チルド・冷凍)の混合データ
- 課題:「欠品(機会ロス)」と「過剰在庫(キャッシュフロー悪化)」の同時監視
これらをExcelの表で追うのは限界があります。必要なのは、現場のマネージャーが思考停止せずに動ける「論理の階段」をデザインすることです。
現場を動かすUI/UX:3つのこだわり
単にきれいなグラフを並べることには意味がありません。徹底的に「現場が次に動くためのUI/UX」を意識して設計すべきです。具体的なポイントは以下の3点です。
1. 直感的な「リスク・カラーリング」
地図上に表示されるバブル(円)は、在庫量に応じて大きさが変わりますが、真に重要なのは「色」による情報の選別です。
- 赤色(危険):欠品 → 今すぐ補充のアクションが必要
- 紫色(異常):過剰 → 在庫削減・移動の指示が必要
- 緑色(適正):正常 → 監視不要
これにより、マネージャーは**「地図上で赤い点が出ている場所」を見るだけで、瞬時に問題拠点を特定できます。判断の回数、すなわちビジネスにおける「手数」**を最大化するためには、認知コストを極限まで下げる必要があるのです。
2. 「ドリルダウン」と「リセット」の導線
地図上の拠点をクリックすると、右側の詳細テーブルが連動して切り替わる「クロスフィルタリング機能」を実装しました。「全体像」から「詳細データ」へ、クリック一つで深掘りできる導線です。
また、多角的な分析のために絞り込み機能をつけていますが、必須なのが「条件をクリア」ボタンです。 複雑な操作をした後、ワンクリックで初期状態に戻せる機能があるだけで、ユーザーの心理的ハードルは下がります。これがないツールは、現場で使われなくなります。
実演:データは触ってこそ意味がある
論より証拠です。実際に構築したレポートを操作してみてください。 「カテゴリ」で『冷凍』だけを選んでみる、地図上の『赤いバブル』をクリックしてみる。その瞬間に右側の表が連動して動く様子を体感できるはずです。
おわりに:DXの本質は「時間」を取り戻すこと
今回の構築にかかった時間は短時間ですが、得られる効果は絶大です。 Excel作業に追われて残業をするのではなく、ツールに任せられる部分は任せ、人間は「判断」に集中する。
そうして生み出した時間で、しっかりと「7時間半睡眠」をとってコンディションを整えること。あるいは、新たな戦略を練ること。 データを「見る」ものから「使う」ものへと変えることは、単なる業務効率化ではなく、私たち自身の働き方を健全化する第一歩です。
